IT業界全般

最近よく聞くDX化とは?IT化との違いを徹底解説

     最近テレビや新聞・雑誌などでDXというワードが多く飛び交うようになってきました。DXとはDigital Transformationの略で『デジタル技術を用いた変革』を意味し、ITを活用して組織全体やビジネスモデルを変革することを指します。

    ただ、そこで1つ疑問が沸きます。『DXって要はIT化でしょ?』と。DXとIT化は似た意味として捉えられがちですが結論から申し上げると違います。当記事では両社の違いやDXという言葉が注目されるようになった背景について記載しますので、是非理解を深めてほしいと思います。
    ※DXをDX化と呼ぶこともありますが当記事では統一してDXと記載します。

    目次
    1.DXとIT化の違い
     
    1-1. DXとIT化それぞれの定義
     
    1-2. 両社の違いとポイント

     1-3. 導入にかかるコストは関係ない
    2.DXが注目されるようになった背景
    3.DXを推進に向けて
    4.まとめ

    1.DXとIT化の違い

    1-1. DXとIT化それぞれ定義

     冒頭で記載した通りDXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、直訳するとデジタル技術を用いた変革を意味します。この“変革”というワードがポイントで、デジタル技術の導入・活用により組織全体の改革が行われること、ビジネスモデルに変化をもたらすことがDXのポイントになります。

    (ちなみに Digital Transformation のイニシャルを取るとDTですが、なぜこれがDXになるのか。英語ではTransをXと略すことが一般的であるため、 Digital Transformation がDXと略されます)

     一方で、IT化のITとはインフォメーションテクノロジー(Information Technology)の略で情報技術、つまりインターネットやコンピューターの通信技術を意味します。IT化に明確な定義はありませんが、一般的に情報技術を活用して業務を効率化すること、生産性を向上することを指します。

    1-2. 両社の違いとポイント

     DXの定義について、先の内容に加えて2018年12月に経済産業省が発表したDXガイドラインによると、以下のように提唱されています。

    https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf

    「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

    ここから分かることは、業務効率化や生産性向上を目的にITを導入するだけではDXと言わないということです。顧客や社会のニーズを基にデジタル技術を導入・活用し、製品・サービス、ビジネスモデルを革新し、結果としてお客様に利益をもたらすことで初めてDXと呼ぶことができます。

    DXとIT化の違いを端的に述べるなら「DXは最終目標がお客様への新たな価値提供であるのに対し、IT化は最終目標が自社の業務効率化・生産性向上に留まる」ということです。言い換えると、DXはベクトルがお客様と自社の双方に向いているのに対し、IT化とはベクトルが自社だけに向いていると言えます。

    1-3.導入にかかるコストは関係ない


     ここでも混同しやすいポイントとして、デジタル技術の導入・活用にかかるコストはDXとIT化を分けることにおいて関係ありません。

    例えば、飲食店がネットでも商品を変えるようECサイトを開設したとします。ECサイトは楽天やアマゾンに出店することもできますし、無料の作成ツールを使用すれば費用をかけずに開設できます。ただ、ECサイトの開設により、今まではお店に足を運ばないと購入できなかった商品がネットでも買えるようになれば、『お客様に新たな価値を提供する』という意味でDXと呼ぶことができます。

     一方で、大企業が数百、数千万をかけて顧客管理システムを導入したとします。今まで営業個人がエクセルや紙で管理していた顧客情報をシステムで全社一括管理し、業務効率化を図れたとしても、それがお客様への新たな価値提供に繋がらなければDXとは呼べず、単なるIT化ということになります。

    勿論、この顧客管理システムの導入により担当の引継ぎやクロージングがスムーズに行えるようになり、結果としてお客様により効果的な提案が行えるようになればDXと呼ぶことができます。この「お客様への新たな価値の提供」という点がDXのポイントになります。

    2.DXが注目されるようになった背景

     なぜ今DXがこれほど注目されるようになったのか、要因は大きく分けて2つあります。1つは新型コロナウイルスの影響です。対面で人と人が対面で会うことが憚られるようになり、 IT の活用を余儀なくされる企業が業種・業界問わず増えたことです。既存のビジネスモデルではお客様との接点が激減し、 IT 化に留まらず新たなビジネスチャンスを創出する DXが注目されるようになりました。

     もう1つは経済産業省が先ほどのDXガイドラインと同時期に発表した「 DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」です。

    https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

    こちらのレポートによると、日本企業の多くは事業部門ごとにシステムが構築され、それらが複雑にカスタマイズされていることで既存システムのデータを市場の変化に対して柔軟に活用できていないと言われています。また、今後のDXが進まず既存システム維持・管理に IT 人材の労力がつぎ込まれた場合、2025年以降に年間あたり12兆円の経済損失が見込まれるとされています。

    日本はただでさえ欧米の先進国と比較して IT 人材が不足していると言われています。既存の複雑なシステムの運用・管理が足かせとなり DXが進まない状況が続けば、最新のデジタル技術に長けたIT人材が育たず、結果として日本企業全体の国際競争力が弱まるとされています。そして、この影響による数字が2025年には顕著に表れ始める(2025年の崖)とされています。それに警鐘を鳴らすように経済産業省が DX推進を国全体として盛り上げているのです。

    3.DXを推進に向けて

     会社全体としてDXを推し進めようと、デジタル技術を活用した組織全体の改革や顧客への新たな価値を創造しようとしても中々うまくいかないのが現状です。経済産業省の発表によると、日本企業の9割は DXを実現できておらず、半数以上の企業は DXを推し進めたにもかかわらず成功していないとされています。中には DXを推し進めてみたものの、一般的なIT化に留まったという事例も多くあります。

      DX成功のポイントは小さなIT化から始めることだと思います。 IT化が進んでいない企業がいきなりDXを推し進めては現場が混乱してしまいますし、社内からの不満が強まりDX自体が頓挫してしまう場合も考えられます。まずは紙で管理していた資料を電子化したり、クラウドツールを活用して自宅や社外でもデータにアクセスできるようにしたりするなど、 IT化を進められそうなことから少しずつ始めるのが良いかと思います。ベンダー企業と協力しながら、最終的なDX実現、新たな価値の創出をゴールに掲げ、段階を踏んで一歩一歩 IT化を進めることも理想の形と言えます。

    4.まとめ

      DXとIT化はそれぞれに明確な定義がないために、両社の違いに曖昧な部分も多く、IT化とDXを区別なく利用している方も多いのが実情です。大きな違いはデジタル技術の導入・活用によりもたらされる利益をお客様に還元できるかどうかです。システムの導入、ツールの活用が最終的にお客様にどう影響を与えるのか、既存顧客への更なる価値提供や新規顧客の開拓に繋がるかという点を最終目標に見据え、IT化・DXの推進をどう進めていくかご検討いただければと思います。

    TOP